首都圏、近畿圏にとどまらず、全国的にその数を増やしているタワーマンション(超高層マンション)。これまで限られたエリアの特別な住まいだったタワーマンションが、今後ますます身近な存在になりそうです。けれども、「眺望がよさそう」「資産価値が高そう」といった魅力の反面、「地震のときに揺れそう」「エレベーターの待ち時間が長そう」など、懸念点を指摘する人も。
実際にタワーマンションにお住まいの2組の方に、そのメリット・デメリットについて伺いました。
タワーマンションには「●階建て以上」「高さ●m以上」といった法的な定義はありません。
10階建てでも、高さ45mでも、「タワー」という名前の付いているマンションはあります。しかし、「超高層マンション」となると高さ60m以上、およそ20階建て以上の建物が該当する、という明確な決まりがあります。この高さを超えると、建築基準法上、クリアしなければならない構造耐力の基準が厳しくなり、国土交通大臣の認定を受けた構法でないと建築することができません。
さらに高さ100m以上、およそ30階から33階建て以上の建物になると、緊急救助スペースの設置義務が生じるなど、消防法の基準も厳しくなります。
全国で建設・計画されている20階建て以上のタワーマンションは、2019年には11.4万戸に達する予定だそうです(不動産経済研究所調べ)。これほど数が増えているのは、それだけニーズが高いということ。その理由はどこにあるのでしょうか?
1997年に容積率や日照権などに関する規制が緩和され、東京都心や湾岸地域などでタワーマンションの建設が一気に進みました。利便性の高いエリアに立つ希少性の高いタワーマンションは中古になっても値崩れしづらく、転売しやすいのが人気の一因です。その人気が東京や大阪の都心部にとどまらず、大都市圏や地方の中核都市にまで広がったことが、全国的なタワーマンション建設ブームに繋がっているものと考えます
資産価値以外の面でも、見晴らしのよい眺望や充実した共用部、駅近・駅直結の利便性など、住み手にとっての魅力も高いタワーマンション。一方で、災害時の不安を指摘する声も聞かれます。
総務省によると、建築基準法による「新耐震基準」を満たした建物の主体構造は、東日本大震災による被害がほとんどなかったそうです。タワーマンションでは、この建築基準より厳しい構造性能評価の取得が求められています。2017年4月以降は、震源から離れた地域に大きな揺れを引き起こす「長周期地震動」への対応も強化されました。
建物の高さが高いほど基準が厳しくなって建築コストがかさむ一方、構造面では一般的なマンションより優れているとも言えます。最新のタワーマンションは震度6程度の地震では崩壊、倒壊しない耐震性を備えているため、自治体によっては災害時の防災拠点として活用する動きもありますね。こうした事実に目を向けると、むしろタワーマンションの安全性はかなり高いと考えられるのではないでしょうか
「充実している」「豪華だ」と言われるタワーマンションの内側は、実際のところ、どうなっているのでしょうか? タワーマンションの設備やサービスをご紹介。
これはタワーマンンションの中でも「高級」の部類に入る場合、屋内プールがついているところがあります。プールサイドにはもちろんジャグジーも備えていることも。
同じフロアには、大きな浴場とドライ&ミストサウナを備えた「スパ&リラクゼーション」スペースも。スパ内にはタオルやシャンプーが用意されているため、思い立ったときに手ぶらで行けます。
一方で、高級タワーマンションに必ずあるといっても過言でないのがフィットネスジム。ここでは、筋力アップやダイエットなどの目的に応じて、パーソナルトレーナーによる個別指導も受けられます。
このほかにも、クラブラウンジやゲストルーム、ボードルーム、シミュレーションゴルフといった豪華な共用施設があることも。ここまでフルスペックな物件は少ないものの、タワーマンションでは住人だけが使える共用施設が充実しているのは珍しいことではありません。
タワーマンションは駅徒歩数分圏内のところに立地する事が多く、利便性が高いのはもちろんのこと、高層階から一望できる新宿の街は、まさしくタワーマンションならではの眺望です。特に高層階では周りに遮るものがないため、北向き住戸でも十分明るいだけでなく、他人の目線が気にならないから1日中カーテンを全開にして眺望を楽しめるというメリットもあるようです。
多くのタワーマンションでは24時間、有人管理体制が採用されています。日中はコンシェルジュ、夜は警備員による目が行き届いているため、防犯効果が高いのが特徴です。また、防災設備の管理や災害時の消防活動などを行う防災センターの設置が義務づけられていることも、セキュリティ面での安心・安全につながっているといいます。
いいことづくめ……のように感じるタワーマンションでの暮らしですが、デメリットだと感じる点はあるのでしょうか?
実際の入居者様にお話を聞いたところ、、「タワーマンションの高層階は、網戸がついていないのが不便だと思います。強風による落下を防ぐためだそうですが、高層階でも虫がはいってくることがあるので、窓を開けづらいのは困りますね。あと、今住んでいるタワーマンションではプールや大浴場への子どもの立ち入りが禁止されているため、夫婦二人のときほどマンションのサービスを満喫できなくなったのも残念です」とのこと。
「高層階に住んでいることもあり、エレベーターの待ち時間が長くて大変なのではないかと尋ねられるのですが、長いと感じたことはありませんよ。行き先に応じて複数台が使い分けられているうえ、一般的なマンションより高速のエレベーターが採用されていることも、その理由かもしれません。ただ、館内は基本的にエレベーター移動なので、地震などで停電すると困ります。建物の構造的には一般的なマンションよりシビアな基準でつくられているので安心していますが、停電時の移動が大変なのはデメリットと言えるかもしれませんね」との意見もいただきました。
最後に、入居者様に「タワーマンション住まいをおすすめしたい人」について尋ねてみました。
「1人暮らしか、子どもがいないもしくは巣立った後の夫婦2人暮らしに向くように思います。タワーマンションの眺望やステイタス性などはすぐに飽きます。購入してから『しまった!』と思っても取り返しがつかないので、本当にタワーマンションが欲しいのかどうか、購入前によく考えた方がいいように思います。賃貸で暮らしてみて、適性を見てみるといいかもしれませんね」とのご意見をいただきました。
立地や資産性、共用部の魅力など、住まいの外側ばかりに注目してタワーマンションへの入居を決めてしまうと、住み始めてから「こんなはずじゃなかった」と嘆く危険性もあると指摘されています。例えば、一般的にマンションは南向きがよいとされていますが、ベランダのないダイレクトウィンドウのタワーマンションでは夏、暑すぎるという人も。ベランダガーデニングを楽しみたくても、規約で禁止されている場合もあります。窓が開けられないことで息苦しく感じる人や、高層階で微弱な揺れを感じて気持ちが悪くなるという人もゼロではないようです。
タワーマンションというと分譲で購入するものというイメージが強いかもしれませんが、賃貸に特化した物件のほか、分譲マンションの購入者が賃貸に出している部屋もあります。タワーマンションに興味があるけれど、なんとなく不安……という人は、賃貸のタワーマンションにまず住んでみる、という選択肢もアリかもしれませんね!
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